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ルポ雇用なしで生きる [読書メモ2016]

『ルポ雇用なしで生きる』 工藤律子 2016/02

ルポ 雇用なしで生きる――スペイン発「もうひとつの生き方」への挑戦
著者はジャーナリスト。 スペインにおける社会運動をルポした本。

 2011年5月11日、首都マドリードで街の中心にあるプエルタ・デル・ソル広場に向かって、何万人もの市民がデモ行進した。やがて市民集会が開かれ、人々は自らを組織し始めた。これが後に米国で起きた「オキュパイ・ウォールストリート」にヒントを与えたといわれるスペインの市民運動「五月十五日」=通称15Mの始まりだ。
 15M運動は重要な変化を市民の脳内に引き起こした。それは「お金にばかり頼らない経済のあり方・生き方」に目を向けることだ。「ラ・コンセ地区議会」では、地域の公園や広場を利用して「物々交換市」を実施している。もう一つ、ユニークなものがある。「時間銀行」だ。
 2010年に出版された、フリオ・ヒスペール『雇用なしで生きる』は、15M運動の人たちが模索し始めた「もうひとつの経済」のきっかけだった。銀行員のフリオ氏は「地域通貨」のアドバイザーとなって実施した。 「もうひとつの経済」とは、雇用も公的補助金も寄付もなくても、「仕事をする」ことさえできれば、ちゃんと生きていくことができる経済世界のことだ。 「雇用」と「仕事」は異なる。その例が「家事労働」。
 「時間銀行」を世界で最初につくったのは日本だった。1973年の大阪で、水島照子さんが立ち上げた「ボランティア労力銀行」。
 スペインには17の自治州と2つの自治都市それぞれに、中心的フードバンクが存在する。その下に地域のフードバンクが集まり、物資を有効に活用、配給する体制を形作っている。
 アンダルシア州ヘレス・デ・ラ・フロンテーラで地域通貨ソキートを生み出したのは日本人、飯島真紀さん。

人類のやっかいな遺産 [読書メモ2016]

『人類のやっかいな遺産』 ニコラス・ウェイド 2016/04

人類のやっかいな遺産──遺伝子、人種、進化の歴史
著者はイギリス生まれの科学ジャーナリスト。 人種・民族ごとの発展の違いは遺伝や進化の影響を受けているという本。

 人類は進化の途上にあり、人類の特質は静的ではなく動的である。人類の進化が最近になっても、頻繁に、局所的に起こっている。 世界中のゲノムの分析で、人種というものが生物学的に実在することが確認されている。
 人種差別主義は意外にも現代的な概念で、オックスフォード英語辞書に初めて登場したのは1910年だ。
 人種研究は19世紀にあやしげな方向転換をとげる。その見本が1853-55年に出版されたゴビノーの著作『人種の不平等についての小論』だ。優越人種はインド=ヨーロッパ人(アーリア人)で、混血が退化をもたらすというのがゴビノーの仮説だった。
 ダーウィンのいとこ、フランシス・ゴルトンの優生学は、知的に優れた者が子どもを増やすよう奨励できれば、社会は良くなるという信条にあった。
 さまざまな人種や世界の巨大文明に、各種の大きく違った社会が見られるは、文化だけのせいでなく、社会の構成員たちの遺伝子によって伝えられた社会行動のせいでもある。
 人種間の遺伝的な違いは、おもに対立遺伝子頻度に基づくものだ。 人種というのは明確にわかれた存在ではなく、似たような遺伝的変異を持った個人のまとまりでしかない。
 何世代も変わらず続く(社会)制度は、遺伝的に形成された社会行動に根ざしているために安定性を保っている。東アジア社会が持つ独特の性質は、効率的な独裁制をもたらしがちだ。
 アシュケナジム・ユダヤ人(ヨーロッパ系ユダヤ人)のIQは110から115の間で、あらゆる民族集団の中で最高。一方で視覚空間問題(狩猟などに有利な能力)だと得点が低い。 ユダヤ人の資本主義への適応も、(エスキモーが極地に、チベット人が高地に適応したように)そうした進化的なプロセスだ。

5月第4週に読んだ本(まとめ) [既読一覧]

『「あせらない自分」のつくり方』 森川陽太郎 2016/03
『みんなで行こうアホノミクスの向こう側』 浜矩子 2016/02
『50歳からの起業術』 中野裕哲 2016/05
『お金の流れで読む日本の歴史』 大村大次郎 2016/03
『21世紀日本の格差』 橘木俊詔 2016/02
『世界の英語ができるまで』 唐澤一友 2016/04

「あせらない自分」のつくり方 [読書メモ2016]

『「あせらない自分」のつくり方』 森川陽太郎 2016/03

緊張しても乗り切る!  「あせらない自分」のつくり方
著者はOKラインメンタルトレーナー、元サッカー選手。 焦りに対する対処法を教える本。

 人間が焦らないでいることは、そもそも不可能。 平常心を持っているように見える人は、「焦ってもできる」方法を知っている。 大切なのは、「焦らない人」を目指すことではなく、「焦ってもできる人」を目指すこと。
 焦ってダメになる人は、「焦り=悪いこと」と考えている。「自分は焦っていない」と思い込もうとする。 いつの間にか”焦りをなくすこと”が目標になってしまい、本番で結果を出すという本来の目的(への努力)が二の次になってしまう。
 焦ってダメになる人は、他人からの評価を意識しすぎる。
 焦ってもできる人は、焦ることを前提として受け止め、その上で「どうやればうまくできるのか」を考えて実行する。
 焦ってもできる人は、自分の実力・できることうぃきちんと把握している。自分を大きく見せようとしない。
 焦ってもできる人は、想定外の状況に直面したときにも柔軟に”方針転換”することができる。
 「OKライン」を設定することで、自己肯定感を持って目標に向かうことができる。

みんなで行こうアホノミクスの向こう側 [読書メモ2016]

『みんなで行こうアホノミクスの向こう側』 浜矩子 2016/02

みんなで行こう アホノミクスの向こう側
著者は同志社大学大学院ビジネス研究科教授。 経済活動が目指すべきは、日本国憲法が示すものだという本。

 ユーロは、統一ドイツの力を単一通貨圏の中に封じ込めてしまおう、という政治のパニック的決断によって生まれた。経済無視の政治の暴走。その結果が今のユーロ圏の大混乱だ。 そもそも欧州統合の歴史の発端は、欧州防衛共同体を作ろう、というところにあった。外交安全保障と表裏一体の経済政策は、(日本と同じく)ここでも大いなる危険性を露呈している。
 ところが安倍政権は政経徹底一致(ここでは政=安全保障)の方向性をもってひた走ろうとしている。戦後から脱却するというのは、すなわち戦前に戻ること。大日本帝国、富国強兵の世界だ。
 安倍政権が追及している富国強兵は、決して「富国のため」の強兵ではなくて、「強兵のため」の富国である。
 日本はいまや輸入依存度が高い。円安追求は貿易赤字を膨らませ、経常収支レベルで黒字を維持していくことが難しくなる。要するに日本が資本不足状態に陥ることを意味している。日本は手持ちの資本で自国の経済活動が生み出す対外需要を賄えない国になる。
 資本不足国の金利は上がる。だが(日銀は)異次元から帰ってくるわけにはいかないだろう。資本不足が本格化すれば、日本経済は干上がることになる。ミイラ化だ。
 経済政策の役割は、一に均衡回復であり、二に弱者救済。
 日本経済は「壊れたホットプレート(寒暖が局在している)」化している。ざっくり言えば21世紀に入ってしばらくした辺りから。 日本企業が必死で自己保存に走った結果、日本経済の壊れたホットプレート化現象が発生した。
 彼ら(安倍内閣)の世界がいかに日本国憲法の世界と遠いか、そして今こそ、グローバル時代そのものが日本国憲法を必要としている。日本国憲法の世界は、経済活動の本来あるべき姿との関わりでも、貴重な寄る辺と道しるべを我々に与える。
 必要なのは三つの出会い。「多様性と包摂性の出会い」「正義と平和の出会い」「狼と子羊の出会い」。この三位一体の出会いが実現している場所に、日本国憲法がある。

50歳からの起業術 [読書メモ2016]

『50歳からの起業術』 中野裕哲(ひろあき) 2016/05

50歳からの起業術 ~シニア起業と独立を成功に導く実践的ノウハウ61~
著者は起業コンサルタント、税理士。 起業を成功に導くノウハウを紹介する本。

 独自の手法を多くの人に伝えようと講師、またはコンサルタントで成功しているシニア世代は意外と多い。
 起業で比較的リスクが低い職業が「士業」。
 会社が存続するか否かは「創業後3年間」でわかる。起業後3年で約半数が廃業している。
 走りながら考えられる人が成功する。 安定志向で人と競い合うのが苦手な人、知らない人との輪を広げるのが苦になるような人は、起業に向いていない。
 創業時の運転資金は最低3か月分用意する。創業融資はぜひ受ける。安易に身内から借金をしない。
 起業のテーマ選びの着眼点:「実現したいこと」「得意分野」「社会のニーズ」
 フランチャイズならノウハウを教えてもらえるから大丈夫と甘く考えていると、痛い目に遭う。
 低金利の融資でも、経営者の個人保証が求められ、連帯保証人にならなければいけないものは避けるべき。
 公庫や自治体の公的融資を優先利用する。
 自己資金の割合は、1/3から1/2が目安。
 飲食店の開業には初期投資がかかる。少なく見積もっても600万円から1000万円はかかる。
 融資の有無にかかわらず事業計画書作成は必須。
 ひとつの事業に固執せず、新規事業にもチャレンジする。

お金の流れで読む日本の歴史 [読書メモ2016]

『お金の流れで読む日本の歴史』 大村大次郎 2016/03

お金の流れで読む日本の歴史 元国税調査官が「古代~現代史」にガサ入れ
著者は元国税調査官のフリーライター。 お金に着目して日本の歴史を解説する本。

 日本に関する最古の記録は、『漢書』の地理志の燕地条にある。「楽浪海中に倭人あり。分かれて百余国となる。歳時を以て来り献見す(貢物をする)といふ」。これは紀元前1世紀ごろのことを書いたものだ。日本は紀元前100年ごろ、すでに中国(漢)と外交関係を結び交易していたのである。
 「三国史記」によると白村江の戦い(663年)で日本側は1000艘の船を用いたという。兵士の動員数は「万」以上だったはずだ。当時の日本はそれなりに国家としてうまく機能し、相当な軍事大国、経済大国であったことは間違いない。
 「大化の改新」は財閥解体。蘇我氏は税を管理するポストに就いて経済力をつけた。つまりは職権により私服を肥やした。
 古代日本の「租庸調」という税制の時代は、それほど重税にはならず、また社会保障制度なども採り入れられていた。「賑給」は、高齢者や貧困者に米・塩・布などを支給する制度。
 平安時代は、ちっとも”平安”ではなく、内戦に明け暮れた時代。 菅原道真は「寛平、延喜の改革」と呼ばれる国政改革を実行しようとして、有力貴族の反発を買い、左遷させられた。
 日本における貨幣の普及は非常に遅く、きちんと流通し始めたのは鎌倉時代。
 和同開珎の鋳造は708年であるが、やがて朝廷はとんでもない貨幣政策の失敗を犯してしまう。760年、朝廷は「万年通宝」という新しい貨幣を鋳造し、和同開珎の10倍の価値と定めた。似たような2つの銭に10倍の価値の差があるとなると、人々はその価値に疑念を抱く。貨幣経済は大きく混乱。米・布が通貨代わりに逆戻りし、平安末期まで続いた。
 日本で最初の”大金持ち”になったのは、宋銭を輸入した平清盛。
 室町幕府の将軍家の費用は、主に「酒屋土倉役」からの収入。土倉とは金貸し。中世から近世にかけて、商業の主役は酒屋だった。
 比叡山延暦寺は(戦国時代)日本最大の”財閥”だった。織田信長が初めて金・銀を通貨として使用して、デフレを解消させた。
 太閤検地の画期的な点は、田畑の所有者、耕作者(納税者)を特定したこと。
 江戸時代の年貢の実体は「三公七民」くらい。江戸時代の記録では日本全国で3222万石の収穫量であったが、明治時代に集計すると、実は4684万石もあった。「隠し田」が相当あったようだ。町民にはもっと甘かった。というより江戸の町民には税金らしい税金は課せられていなかった。
 明治日本では、軍費のほとんどを賄ったのは、酒税。

21世紀日本の格差 [読書メモ2016]

『21世紀日本の格差』 橘木俊詔 2016/02

21世紀日本の格差
著者は京都女子大学客員教授。 日本における格差を欧米と比較する本。

 トマ・ピケティ『21世紀の資本』を要約すると、「資本主義経済の宿命として、高所得者・高資産保有者はますます富裕化する」ということ。(原因として)労働所得の伸びよりも資本所得の伸びが上回り、結果として格差の拡大がますます進行している。阻止するための手段として、資産(資本)への累進課税を主張する。 一方、ピケティの分析では、所得が極端に低い貧困層とか資産保有ゼロの人びとは関心の対象外。
 2015年のノーベル経済学賞受賞者アンガス・ディートンは、健康の格差を分析した。国民が豊かになれば平均寿命が基本的には延びる。先進国と発展途上国の間には、非常に大きな健康格差がある。
 アンソニー・アトキンソン(ピケティの師匠筋)は、経済効率と公平性は一般にトレードオフ関係にあるとされるが、政策をうまく行えば、それらを同時に達成することは可能、との主張。
 日本における格差問題の象徴は、正規労働者と非正規労働者の間にある処遇の差。
 ピケティの書物でほとんど言及されていない格差は男女間格差。日本はどの欧米諸国よりも遅れている。
 筆者は、引退した高齢者と働くことのできない子どもに限定すれば、ベーシックインカムを支給してもよい、とのスタンス。
 アメリカを始め、ヨーロッパ諸国では、税・社会保険料と労働供給の関係を分析するデータが個票として利用可であるが、日本ではこれが不可能。日本では(労働供給と累進課税)の実体は何も分かっていないのに等しいのが現状。
 相対貧困率は、中位所得の50%以下の所得しかない人が貧困者。やや誇張すれば、生活保護制度がうまく機能していれば、本来ならば貧困者はゼロになっているはず。実際には約16%。
 先進国の間では経済効率性と公平性を両方兼ねている国(スウェーデンなど)と両方を満たしていない国(代表例は日本)があり、必ずしも効率と公平がトレードオフ関係にない例がある。
 格差を是正するには、低所得者の所得を上げる方が経済成長率を高める効果がより強い。

世界の英語ができるまで [読書メモ2016]

『世界の英語ができるまで』 唐澤一友 2016/04

世界の英語ができるまで
著者はオクスフォード大学客員研究員。 英語の歴史的経緯についての本。

 オランダやドイツの一部地域で使われているフリジア語は、英語と最も系統の近い言語。英語とフリジア語の元になった言語は、もともと隣接地域でつかわれる方言同士だった。
 英語の歴史では以下のような時代区分に従う。 450-1100年:古英語 1100-1500年:中英語 1500-1900:近代英語 1900年以降:現代英語
 最古の時代の古英語は5世紀にアングロ・サクソン人たちによってイングランドにもたらされた。彼らの原住地は現在のドイツ北部やデンマークの辺り。ブリテン島にはケルト系の人々が暮らしていたが、アングロ・サクソン人は彼らから主要部の支配権を奪い古英語を根付かせた。
 当時の英語はゲルマン語の一方言だった。同じくゲルマン語の方言であった古高地ドイツ語に端を発する現代標準ドイツ語。古英語は、およそ現代ドイツ語のようであったと考えるとイメージが湧きやすい。
 8世紀末頃から、ヴァイキング(デーン人)がイングランドに侵入するようになる。ヴァイキングの古ノルド語との接触で、従来の古英語の文法体系が崩れていった。
 1066年、ノルマンディ公ウィリアムがイングランドを征服し、支配者がフランス語、書き言葉はラテン語となる。マグナ・カルタの原本はラテン語。
 フランス語の影響を受け、古英語から中英語となる。爵位、法律用語、食文化、芸術などに関連する語彙がフランス語から取り入れられた。生きている動物(ox, pig, sheep)は英語本来語、食肉(beef, pork, mutton)はフランスからの借用語である。
 百年戦争(1337-1453)の頃には支配者層でも英語話者が多くなり、公的な場でも英語が再び使われるようになる。
 古代から初期中世までは、(現在の)アイルランドはスコットランド(スコット人の土地)と呼ばれていた。スコット人とはゲール語を話す人。

5月第3週に読んだ本(まとめ) [既読一覧]

『「無理」の構造』 細谷功 2016/03
『「明日、営業に行きたくない!」と思ったら読む本』 太田和雄 2016/03
『モノは感情に売れ!』 橋本之克 2015/10
『資本の世界史』 ウルリケ・ヘルマン 2015/10
『ストックビジネスの教科書』 大竹啓裕 2015/10
『社会人1年目からのとりあえず日経新聞が読める本』 山本博幸 2016/03