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中国GDPの大嘘 [読書メモ2016]

『中国GDPの大嘘』 高橋洋一 2016/04

中国GDPの大嘘
著者は嘉悦大学教授。 中国が発表するGDPの数字は偽造されており、実態は危機に瀕しているという本。

 ソ連を間違った方向に導いたのが偽造統計。ソ連崩壊まで世界は騙され続け、国民所得の伸びに至っては10倍以上にも膨らませていた。公表されていたGDPも、実際はその半分程度だった。 中国は、ソ連を真似て中央集権的な統計組織を構築。当然、統計の算出方法もソ連から指導を受けていると推察される。
 しばらくの間、中国の統計は信用できない。実は中国政府自身もそのことは十分に自覚し、危機感を抱いている。 中国経済が抱える問題は、これからも溜まっていくが、一気に爆発するということは当面ない。
 世界各国の「GDP成長率で変化率の少ない国」をランキングすると、なぜか上位に社会主義国が名前を連ねる。中国は4位。中国のような経済大国の変動率が小さい点に、そもそもの疑問が湧く。世界経済の変動の影響を受けるはずだ。
 李克強は遼寧省のトップだったとき、信用できるのは電力消費量、鉄道貨物輸送量、銀行融資額の3つだけ、と言った。
 中国の公式失業率は、調査の対象を、失業率が低い都市部の戸籍を持ち、なおかつ職業安定所に登録した労働者だけにしている。もともと無意味な調査であり数値。
 世界の先進国のデータから推測するに、中国の輸入の伸び率からGDPの伸び率を算出すると、2015年は6.9%どころか、-3%ということになってしまう。
 私は中国の実際のGDPは、公式発表されている数値の三分の一程度ではないかと思っている。
 「克強指数」は(遼寧省のような)重工業を中心とした動向を探るには一定の目安にはなるかもしれないが、サービス業の動きは現れにくい。
 中国では、日本のように手形不渡りで銀行取引停止という処分もないので、倒産がなかなか顕在化しない。
 バルチック海運指数が下げ止まらない。2015年夏に1200P超でピークを付け、それ以降は下げ続けている。直近では300を切った。これはリーマンショック後に付けた安値をも下回る。
 2016年の各自動車メーカーの中国工場での稼働率は、半分にまで落ち込む見込みだ。

THE TRUMP [読書メモ2016]

『THE TRUMP』 ドナルド・J・トランプ 2016/07

THE TRUMP - 傷ついたアメリカ、最強の切り札 -
著者は20116年アメリカ大統領選挙・共和党指名候補者。 トランプが自ら考えていること、やろうとしていることをまとめた本。

 こんなにも多くの人々が(選挙ディベートに)チャンネルを合わせた理由は何か?その理由は、普通の政治家が口を閉ざしている、人々が知らねばならないこと、聞く権利のあることを私が話したからだ。”ポリティカリー・コレクト”など気にしている場合ではない。
 私は攻撃されることなど屁とも思わない。メディアが私を利用するのと同じやり方で、私もメディアを利用する。ちょっとばかり人と違うことをしたり、相手とやりあったりすれば彼らは大喜びする。だから私は時折無礼な発言をして視聴者や読者が望むものを与えてやる。
 本当に最低のジャーナリストにも会った。彼らは無能さゆえに不正確な記事を書いてしまうのではない。最初から嘘を言うのが目的なのだ。
 私は、人をクビにすることによって彼の未来を最大限に引き出すことのできる世界でただ一人のボスだった。
 米国人は、多くの政治メディアが重要な政治問題について正しい説明をしていないことに気づき始めている。メディアは人々や選挙を操作し、当選して欲しい候補を有利に導こうとしている。
 私の仕事のやり方はこうだ。その仕事に必要な最高の人材を見つけ、彼等を雇い、事に当たらせる。だが監督することも忘れない。
 私は決して反移民ではない。私が許せないのは不法移民という存在だ。不法移民は非常にアンフェアなものだ。国境を守れない国家は国家ではない。 メキシコが不法移民を防ぐために、自国の南部国境に壁を建設したことを知る人は少ない。 現行の移民法はまったく間違っている。我々が必要とする人々が移民するのは難しく、来て欲しくない人間はやすやすと入り込める。有能で法を守る人々が移民するのを困難にしてしまっている。
 オバマ大統領のイランとの交渉は、最悪のものだ。あれ以上まずいやり方は不可能だろう。イランが核武装すれば中東に核兵器の武装競走が起きるのは目に見えており、それは恐ろしい結末となる危険を孕む。
 中国経済の今後は米国次第だ。彼らは我々が中国を必要としている以上に、米国との貿易が必要なのだ。だが愚かにも、米国はこの優位性を利用していない。
 米国の学校はもはやこうしたこと(基本的な知識・価値観・生きるスキル)を教えない。代わりに彼らが自尊心を持ち、自分自身を心地良く感じているかどうかばかりを気にする。「ポリティカリー・コレクト」主義者が学校を乗っ取り、その結果我々は子供たちを「落第」させてしまった。
 私の主要な構想の一つは、税法の複雑性と、あからさまな金持ち優遇の両面を見直すこと。
 この国のインフラは崩壊が始まっている。米国の橋の1/3近くがすでに耐用年数を過ぎている。いくつかの橋はすでに崩落した。

オレ様化する人たち [読書メモ2016]

『オレ様化する人たち』 片田珠美 2016/06

オレ様化する人たち あなたの隣の傲慢症候群
著者は精神科医。京都大学非常勤講師。 「傲慢症候群」の症状と対処法を紹介する本。

 傲慢な人は「過去の栄光」をよすがにして、現在の自分を過大評価していることが多い。そのため、目の前の現実をきちんと認識できず、現実否認に陥る。こうした傲慢さは、個人だけでなく組織にもしばしば蔓延する。最近、名門企業の不祥事が相次いでいるが、これは「過去の栄光」の上にあぐらをかいているうちに、目の前の現実と真摯に向き合えなくなったからだろう。
 「ヒュブリス・シンドローム(傲慢症候群)」を提唱したのはイギリスのオーエン元外相・厚生相。傲慢症候群は病気ではなく、「権力の座に長くいると性格が変わる人格障害の一種」というのがオーエンの考え。
 アリストテレスは「若者や金持ちはヒュブリスに走りやすい。傲慢に振舞うことで優越感を覚えるからである」と述べている。
 傲慢になって表れる症状は、①話を聞かない ②自らを誇示する ③人を威嚇する ④横暴になる ⑤同意ばかり求める ⑥自社開発(自前)主義。
 自分の優位性を再確認できるネタを探さずにはいられない人間は、少しでもネタを見つけると、そこをつついて傲慢になりやすい。 勘違いの根底には、自分の判断力や能力への過信が潜んでいる。
 傲慢症候群になりやすい人は、①自己愛が強い ②権威に弱い ③序列に敏感 ④視野狭窄 ⑤自己正当化 ⑥現実否認 ⑦自己顕示欲が強い ⑧快感原則を現実原則より優先 ⑨実は気が小さい ⑩強い欲求不満 ⑪フィードバックがかかりにくい。
 対処法でまず大切なのは、それに気づくことである。過去にそれなりの実績があり、功労者として認められている場合は、周囲から大目に見られやすく、許容されやすい。 いずれにせよ傲慢人間に立ち向かうには、孤立しないように日頃からネットワークを張り巡らせておくことが必要。傲慢人間を忖度したり称賛したりすることは、長い目で見れば、デメリットの方が大きい。傲慢人間の欲望をすべて満たそうとするのでなく、「これ以上は許容できない」という限界をきちんと示すこと(リミットセッティング)が必要。
 「何でも言うことを聞く部下」と思われないようにする。「ちょっと面倒な部下」と思われるくらいでちょうどいい。 所属する組織が傲慢症候群のせいで自滅しないようにするには、できるだけ外部の風を入れて、風通しを良くするしかない。

8月第4週に読んだ本(まとめ) [既読一覧]

『パラレルキャリア』 ナカムラクニオ 2016/06
『クオンタムユニバース 量子』 ブライアン・コックス 2016/06
『海藻の疑問50』 日本藻類学会 2016/06
『世界から好かれている国・日本』 黄文雄 2016/06
『損したくないニッポン人』 高橋秀実 2015/09
『小さな運送・物流会社のための業績アップし続ける3つのしくみ』 酒井誠 2016/06

パラレルキャリア [読書メモ2016]

『パラレルキャリア』 ナカムラクニオ 2016/06

パラレルキャリア──新しい働き方を考えるヒント100
著者はブックカフェ「6次元」店主。 新しい働き方・パラレルキャリアの心得を紹介する本。

 「働き方」のサードウェーブがやってきた。複数の仕事を持ちながら、境界線を越えて活動する働き方「パラレルキャリア」に注目が集まっている。 『不思議の国のアリス』の作者ルイス・キャロルの本業は数学者。『星の王子さま』の作者サン=テグジュペリの本業は郵便パイロット。
 パラレルキャリアは副業ではなく、自分が幸せになる「福業Happy work」を日常に取り込む働き方。
 「働く」ということは、「サクセス(成功)」だけではなく「プロセス(過程)」が大切。少しづつ「天職」に近づいていけばいい。
 荻窪のブックカフェ「6次元」は「パラレルキャリア」というキーワードが大きな割合を占めている。自分自身も含め、お客さんもお店を使って、1日カフェの店長を楽しんだり、読書会や朗読会のイベントを企画したりして副収入を得ている。最初に試したのは「占いカフェ」。続いてコーヒー講座。マッサージ屋さん。
 古本XカフェXギャラリーというお店を始めて、すぐに大きな問題が生じた。ぜんぜん「古本」が売れない。みんなが求めているのは、物質より空間や体験。「物」をそれほど欲しいと思わなくなっている。一番の需要が「ちいさな体験型イベント」。
 仕事は3つに分類することができる。①ライスワーク(食べるための仕事) ②ライフワーク(人生をかけた仕事) ③ライクワーク(趣味を活かした仕事)
 カステラの法則:呪文みたいに「カステラが食べたい・・・」「カステラが食べたい・・・」と言っていると、カステラが自然と手に入るという法則。
 パラレルキャリアで必要なのは、時代を読む力。 不思議なことに人はパラレルに脳を使うとなぜか幸せを強く感じる。
 週末起業系の副業は大きく3つのタイプ。①労働力を売る「カラダ系副業」 ②技能や経験を売る「スキル系副業」 ③インターネットを利用する「ネット系副業」
 アイデアが詰まったとき、「よそもの」「わかもの」「ばかもの」から学ぶことが大切。
 安全第一という考えが一番危ない。危険を冒さないと、本当に欲しいものが手に入らない。

クオンタムユニバース 量子 [読書メモ2016]

『クオンタムユニバース 量子』 ブライアン・コックス 2016/06

クオンタムユニバース 量子
著者はマンチェスター大学フェロー、王立協会研究員。 量子力学を紹介する本。

 光は電磁波の一種で空間をうねりながら進んでいくという考えには、異論を挟む余地がまったくないと思われていた。ところがコンプトンらが行った一連の実験で、光が電子に当たったとき、どちらもビリヤードの玉のようにはね返ることが示された。1926年、光の粒子は「光子」と命名された。光が波動と粒子の両方としてふるまうという事実はもはや疑いようもない。こうして、古典物理学の時代は終わりを告げ、誕生したばかりの量子力学も新たな時代を迎えた。
 二重スリットの実験で電子が「自分自身と干渉」するためには、何らかの意味で、隙間を抜けるときに拡散する必要がある。点でありながら拡散もする粒子は、どんな理論で説明できるのか?これはさほど難しくない。一個の粒子が「多数の場所に同時」に存在すればいい。いかに直観に反しても、それが粒子の実際のふるまいなのだ。 混乱の原因は新しい理論を受け入れることへの抵抗であって、理論そのものの難しさではない。
 陽子と電子の電荷に正負の逆があり、大きさがまったく等しいことは、物理学における重要な謎の一つだ。
 人間の足が床を突き抜けないのは、ある意味で不思議だ。原子の内部には何もない空間が広がっている。問題を難しくしているのは、自然界の基本的な粒子(アップクオーク、ダウンクオーク、電子)にはまったく「大きさ」がないことだ。粒子に大きさがなければ、「電子を2つに割ったらどうなるか?」と尋ねるのは愚問だ。「電子の半分」という概念には、全く意味がない。 足が床を突き抜けない理由は、同じ種類の電荷が反発するという電磁力だけではないことがあきらかだ。パウリの排他律によって、電子が本質的にたがいを避けるためだ。
 電子が実際に過去に向かってタイムトラベルをするなら、それは正の電荷を帯びた電子として観測されるはずだ。このような粒子は実際に存在して、「陽電子」と呼ばれている。量子力学においては、起こる可能性があれば実際に起こる。この特殊なタイムトラベルは、1928年にディラックが提案したように、まったく禁じられていない。

海藻の疑問50 [読書メモ2016]

『海藻の疑問50』 日本藻類学会 2016/06

海藻の疑問50 (みんなが知りたいシリーズ)
 海藻についての知識普及を目的とした本。

 藻類学は英語でPhycology(ファイコロジー)。心理学Psycologyとは一文字違い。
 藻類は、藍藻、紅藻、褐藻、緑藻、珪藻などに分けられる。藻類はalgea、海藻はseaweed。藍藻は別名シアノバクテリア。 紅藻の身近な種類としては海苔、天草、トサカノリなど。赤い色素を持つことで海の中の光環境に適応した。 緑藻は現在の陸上植物の起源になった生物群で、そのまま水圏にとどまった仲間。 褐藻にはコンブ、ヒジキ、ワカメ、モズクなどが含まれる。褐藻は黄色植物門に属し、過去に2回以上の共生の結果生まれたとされる複雑な起源を持つ生物群。
 「海草seagrass」は陸上植物と同じように花を咲かせる種子植物で、一度は陸上に住んでいたものが海に戻ってきた植物。海藻は海で進化を遂げて、水から出たことはなく、花は咲かない。
 海底に生育する大型の藻類を海藻と呼んでいるが、それらは3群(緑藻類、褐藻類、紅藻類)にわかれて、互いに縁の遠い存在。
 海の深いところへは緑の光しか届かない。そのため深いところでは緑色光をよく吸収できる赤色の紅藻、茶色い褐藻、そして緑藻なら黒っぽい色の種類しか生きていけない。
 ノリの養殖で、胞子を網に付ける「種つけ」は8月下旬から10月に行われ、収穫は10月中旬から4月ごろまで行われる。食用となる葉っぱのようなノリの体を「葉状体」と呼び、寒い時期にしか育たない。葉状体はオスとメスによる生殖を行うための体、種子植物の花のような役割。 ノリ網は収穫後そのままにしておくと、1~2週間後にはまた収穫ができる。ただし何回も繰り返すと成長が悪くなる。
 日本のコンブ生産量は10~12万トンで、養殖は35%。天然ものの95%以上は北海道産。マコンブは2年生のため、養殖には2年かかる。
 中国料理で昔から使われてきた食材、髪菜(中国語でファーツァイ)は、顕微鏡的には糸状の藍藻。内陸の山の頂上近くで生育する陸生藻。
 淡水域に生育する海藻の仲間は、淡水藻と呼ばれる。有名なのがマリモ。 コンクリート壁や石垣など、水気のない環境に出現する藻類は気生藻と呼ばれる。

世界から好かれている国・日本 [読書メモ2016]

『世界から好かれている国・日本』 黄文雄 2016/06

世界から好かれている国・日本 (WAC BUNKO)
著者は文明史家、評論家。 いまの日本の課題は、誇りを取り戻すこと、という本。

 1947年、国民党政府軍の腐敗があまりにひどかったために、それまで台湾にいた本省人が蜂起したのが「二・二八事件」。3万人近くの人が、国民党政府に虐殺された。さらに「白色テロ」(権力者側による暴力行為)といわれる時代に投獄されたり死刑になった人は十数万人といわれる。中国は古来、新しく政権交代すると、最初にやるのが、知識を持っている人間をみんな抹殺すること。
 一般の台湾人にとって、「これが中国人だ」という中国人像は、「二・二八事件」当時に形成された。見せしめの処刑が日常的に全台湾で行われた。
 中国人である以上、モラル(道徳)は疑わしい。そのことは、ウイグル、チベット、台湾など、昔から中国人とのつき合いが深い周辺民族にはよく見えていること。
 日本に来て強く感じたのは、日本の文化人、学者の傲慢さ、無責任ぶり、日本の文化人の言葉の軽さ。戦前の日本人は、何をやるにも命懸けだった。そういう強い責任感が、戦後の日本人には欠けているような気がしてならない。
 戦後の日本の知識人の多くは、伝統的な日本文化、日本の精神、思想などをすべて否定した。そして近代の普遍的な思想として社会主義、市民主義を標榜した。
 中国の尖閣に関する主張は、数多くの古典を引用しているが、私がすべてチェックしてみたところ、中国の領土だったということとはまったく関係ない。中国の主張は、明の時代に中国の船が近辺を通ったから中国の領土だということだけで、筋が通らない。
 日本人が盗みをすることがないというのは、『魏志倭人伝』のなかに「婦人淫せず、妬忌せず、盗窃せず、諍訟(そうしょう)少なし」とあるように、古代から日本人は盗みをしない民族だった。
 道徳教育はすればするほど人間が悪くなる。外からの強制では自分の身にならない。外から見て悪く見えなければいいので、偽善者になる。道徳教育が厳しい国では、だいたい偽善者が多い。
 日中戦争について中国は「八年抗戦」と名づけているが、これはプロパガンダ。日本軍の本格的戦闘は盧溝橋事件(1937)から武漢陥落(1938)までの1年余り。1940年代に入ってからの日中戦争は、南京(日本が汪兆銘を担いだ)、重慶(アメリカが後押しする国民政府)、延安(ソ連が後押しする毛沢東政府)の3政府による、日・米・ソの代理戦争だった。こうしたことは、ほとんど日本の歴史教科書には書いてない。私のように戦前史の資料を研究したものには、戦後の捏造と歪曲にまみれた歴史教育には激しい抵抗を感じる。

損したくないニッポン人 [読書メモ2016]

『損したくないニッポン人』 高橋秀実 2015/09

損したくないニッポン人 (講談社現代新書)
著者はノンフィクション作家。 日本人の損得感についての随筆集。

 いったんどこかに最安値が存在するということを知ってしまうと、それより高い値段で買った(買っていた)という損した気分は拭えなくなる。「知らないと損する」とはお買い得情報の決まり文句だが、実際は「知ると損した気分になる」のである。情報は損の素ではないだろうか。
 そういう(損したくない)人間がいるからスーパー同士の競走にも火がつき、わけのわからないポイントやらクーポンがあふれていく。人々の「損したくない」思いが重なって、この損なシステムは拡大再生産されているのかもしれない。
 (ポイントカードを)使っても損だし、使わなくても損。損の度合いを比較するのは難しく、それを考えること自体も損。
 家計簿をつけると節約できるとよくいわれるが、家計簿は項目の分類に手間がかかる。そんな時間があるなら原稿のことを考えるほうが労力の配分という意味で、経済的。 あらためて学ぶべく、私は主婦向けの節約本を読んでみることにした。いずれも楽しげなタッチなのだが、読み進むうちに、読むこと自体が時間の無駄に思えてきた。
 「得」はもともと「徳」の(意味の)一部だった。「徳」の意味を読むと、ひとつの論理が浮かび上がる。人々に尊敬されることで利益はもたらされる。尊敬が利益を生むということだ。私は妙に合点がいった。少しでも安いモノを買おうとする私の行為には「徳」が欠けている。人々に尊敬される行為の結果とは思えないから、たとえ安くても本来の「徳」した気分が味わえなかったのだ。
 損せずしてこれを益す(『易経』)。「損」は極まると、損しないで「益す」。自分は損せずして相手に益をもたらす。損したくないなどと思ってはいけない。「損」の中にこそ男の生きるべき道があり、そこを着実に歩めば損しないのだ。
 なんでも「ポックリ」とは大和言葉の「保久利」に由来するそうで、「ご利益を久しく保つ」あるいは「永久にご利益を保つ」の略らしい。早い話、損したくないのである。損したくないという執念というか煩悩が燃え盛っているようで、まさに命がけで損したくない様相。

小さな運送・物流会社のための業績アップし続ける3つのしくみ [読書メモ2016]

『小さな運送・物流会社のための業績アップし続ける3つのしくみ』 酒井誠 2016/06

小さな運送・物流会社のための業績アップし続ける3つのしくみ (DOBOOKS)
著者は(株)ナルキュウ代取。 中小運送会社経営のノウハウを教える本。

 1992年、叔母から創業40年の老舗運送会社を引き継いだ。当時、会社はいわゆる「家業」だった。「家業」とは、家族や家族同然と位置付けられた仲間を最優先に考え存続していく事業形態。一方、「企業」は企業価値を限りなく高めていくための組織であり、社会貢献活動。28歳の私は焦るように「家業」を「企業化」する改革を行っていった。
 社長に就任して以来、20年もの間、社長として間違った解釈をしていた。それは、「儲けたい」ということを後ろめたい、良心がとがめるという思い。しかし今は「会社は儲けるためにある」と堂々と言えるようになった。企業は存続しなくては意味がない。存続するためには絶対に利益が必要である。
 人材育成が経営の根幹。これが業績アップし続ける会社の極意。
 人が育つかどうかは企業文化がうまく根づいたかどうかの結果。「教育」と「育成」は別のもの。「育成」はやらされ感のない活動。
 全国トラックドライバー・コンテストへの取り組みが、育成への第一歩だった。これをきっかけに事故や違反のない、プロドライバーとしての技を極める同志の集まりが出来た。このメンバーには「辞めない」「不満を言わない」「人に教えることを楽しむ」「コストを削減する」といった特徴があった。
 一人前のドライバーが辞めていくのは、「上司が普段言っていること」と「上司が実際にやっていること」とのギャップに納得がいかない、「上司不信」が原因だった。
 自前の社内教育は最悪。間違っていることを平気で教えてしまっており、「声の大きい者」の言うことに影響を受ける。
 ドライバーが「居つく」会社は、ドライバーの気質を理解する優秀な管理者がいて、うまくドライバー管理がされている。
 社員の人格形成により会社組織は落ち着いていく。そうすると、いい人材は居つき、そうでない人材は自然と去っていく。結局はこの繰り返しで、会社の風土は徐々に浄化されていく。