So-net無料ブログ作成
検索選択

ぼくの村がゾウに襲われるわけ。 [読書メモ2017]

『ぼくの村がゾウに襲われるわけ。』 岩井雪乃 2017/07

ぼくの村がゾウに襲われるわけ。: 野生動物と共存するってどんなこと?
著者は早稲田大学准教授。新人猟師。 動物保護が動物による被害を生み出している実態を紹介する本。

 タンザニアでは、野生のゾウと村びとがごく近くに暮らしていて、トウモロコシ畑があれば根こそぎ食べつくされてしまう。ときには200頭もの大群で押し寄せてくることもある。
 村びとたちは以前暮らしていた大草原のすみかを追われ、そこに「国立公園」「動物保護区」がつくられ、「人がいない野生の王国」の周辺に村びとは押しやられてしまった。
 保護区の動物たちが村に入ってきて畑が全滅しても、村びとが殺されても国や県からはなんの補償もない。
 「猟獣(動物)保護区」ではハンティングができる。タンザニアでは、ゾウは200万円、ライオンは80万円でハンティングできる。
 1951年、セレンゲティ国立公園になるまえ、日本の四国地方にも匹敵するこの広大な平原には、主に3つの部族、イコマ、マサイ、スクマが暮らしていた。 狩が禁止されてから、イコマは畑作と牧畜で暮らすようになった。そして、10年ほど前から、ゾウが村に入ってきて、作物を食い荒らすようになった。
 ゾウが国立公園から出てくるようになった原因のひとつは、村びとが草原で狩りをしなくなったことで、野生動物が人間をおそれなくなったと考えられている。
 国立公園の入園料はカードで決済するシステムになっていて、現金が途中で不正に消えてしまうということが起こりにくくなっている。
 ゾウの被害を受けているのは、タンザニアの中では少数の人びと。多くの人は野生のゾウを見たこともなく、「ゾウを見るために観光客が大勢来てお金が落ちる」と考えている。
 2000年代にふたたびゾウの密漁が増え、政府発表でゾウの数は11万5千頭(2009年)から4万3千頭(2014年)と60%も激減した。主にセルー猟獣保護区での密猟が原因。背景には、中国、タイでの象牙需要の高まり。
 2013年の密猟一掃作戦の捜査は暴力的で、殺された者13名。この作戦は「政府高官の密猟への関与」から目をそらす目的で行なわれた、との批判記事がタンザニアの新聞に掲載された。 タンザニアは、国の収入の20%を外国からの援助に頼っているので、援助する側の欧米諸国の意向に沿わなければならない。
 様々な国(アメリカ、オーストラリア、アフリカ)の国立公園とその設立過程をみると、どこの国でも、そこに暮らしていた人びとを追い出して国立公園をつくっていることがわかる。つまり、人類の歴史の中で、人が踏み込んでいない「手つかずの自然」というものは、存在しない。
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ: